【Ruin】2016.05.24 廃水力発電所 at 静岡県某所



だいぶ前になりますが、5月に静岡の某廃水力発電所に行ってきました。

一時は廃墟撮影がマイブームとなり、ある時は知らぬ間にヤーさんのナワバリに足を踏み入れ、

ある時は近隣住民に通報され、徘徊するパトカーと攻防を繰り広げ、

ある時はストリッパーの霊に祟られ、即日事故を起こして廃車になったり、、

と、とてもシャレにならない事が多々あり、「廃墟には安全が必要だ!」と選んだのがこの廃墟。

何でも、この廃墟の管理者であるおっちゃんが現地で茶畑の管理をもしているらしく、

訪れれば誰でも許可を取って安全に写真を撮ることが出来るそうな。

しかも、相当な山奥にあってアクセスがメタメタ悪い故に、

余所の廃墟のように人に荒らされた形跡は少なく、ただ純粋に退廃と侵食に苛まれた建築物の美しさ

をカメラに収められるという寸法だ。

これはもう至れり尽くせり!文句の付けようがない!ビバ廃墟!などとのたまっていたが、

世の中なかなかどうしてうまくいかない。そんなにウマい話は早々落ちていないものである。


廃墟までのアクセスは近隣の公園の駐車場に停めて、30分ほど川べりを歩いて行く。

その道中に川を渡って行くのだが、いくら川と言えども人が歩いて渡ったブログも多々あり

安全なルートだと提唱され、そこまで問題視していなかった。

しかし、その「川」が大大大問題だった。

いざ眼前に件の川を構えると、これがなかなかどうして、どう見ても急流だった。

しかも、ケツまで浸かるほどの深さ。もはや身体の半分に達している。

これほどまでの深さに浸かって急流に煽られれば、まともに歩行なんて出来たモンじゃない。

一歩間違えればウン十万のカメラとレンズ、データは果たして淡水にまみれ、即お陀仏である。

しかし、もう廃墟は目の前。片道200kmも走ってきた手前、何とかしたい…。

迂回路も見つからなく覚悟した友人と俺は、そこらで頑丈な枝を広い、

危険な急流渡りを敢行し、本当に何度も死にそうに、泣きそうになりながら

何とか横断を果たしたのだった。


ようやっと辿り着いた廃墟は、評判通り保存状態がとても良く、素晴らしい雰囲気を醸していた。

緑によって浸食された室内が大きな窓ガラスから差しこまれた柔らかな光に照らされて

廃墟であるのに退廃的な要素を軽く凌駕して、もはや神秘めいている。

どこからやってきたのか錆びついた自転車が転がっており、ワンポイントにも一役買っている。

大きな窓ガラスから外を見れば、辺りは一面の茶畑と山。

何から何まで最高のロケーションだった。…が。

果たして無事に帰れるかの事を考えてばかりで全く撮影に集中できなかった。


というのも、あまりにも急流渡りがしんどく、「もう二度と渡りたくない!」と意見が一致したので

廃墟に着いたら管理のおっちゃんに何かいい迂回路は無いか、と聞こうと思っていたのだが

おっちゃんは不在。しかも写真にある通り、

農業用の水道が出しっぱなしになっているくらい放置されている…。

これはきっとただ留守にしているだけの状況じゃなさそうだと感じたので、

周辺を散策して自力で退路を探すも、一向にそれらしい道は見つからない。

後は一か八か、川の反対側にそびえる未開の山を登り、

なんとか人里まで降りるしかなくなっていたのだ。


そうして、一通り撮影を終え山を登り始めた。

生い茂る木々の間を掻き分けて、倒木を跨ぎくぐり、

枝を掴みキツい傾斜もなんとかよじ登って行く。

一行に山は登りきらないし、現在地はおろか、方角さえも定かではない。

その辺の野生動物に何をされても文句は言えねえぞと言わんばかりの、

道なき道での登山を続けて行く。

すると、傾斜が無くなり辺りが少し開けた。

どうやら何とか登頂に成功したみたいでまずは一安心だったが、開けた木々から外を眺めていると

とんでもなく高所に居る事が発覚し、そこから先の山を降りる方向はまるで断崖絶壁を化していた。

流石にこの高さでこの勾配にトライするのにはリスクがあまりにもあり過ぎる。

しかも降りたところで、果たして無事に帰路へ辿りつけるルートなのかも定かじゃない…。

迂回路を探すのにも時間がかかり過ぎるし、日も傾き始めてきていよいよ佳境となったので

俺は友人にこう質問を投げかけました。

「川をもう一度渡るか、崖を降りるかどっちがいい?」

「川で」

デスヨネー。

川の方がまだ命の危険がなく、カメラさえ無事なら安全に帰る事ができる。

泣く泣くようやっと登った山を降りて廃墟へ出戻り。

結局、再びパンツ一丁になり急流を渡って帰りましたとさ。

水位が上がってなくて本当に良かった。これで帰れなかったらレスキューのお世話になるところだった。


結局のところ、一番の安全を求めた廃墟が皮肉なことに一番命の危険を感じたので、

廃墟に安全もクソもないんだなと思いました。

二ヶ月経った今でもあの川の恐怖は忘れられないw

無事、怪我もなく帰れて本当に良かったです。

これ以降、廃墟に行くことはピタリと無くなりましたとさ…。

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